でんでん虫と紫陽花 (童話)

でんでん虫と紫陽花

紫陽花の方は、いつも空を見つめていた。

鈍よりと編み込まれた、グレーの雲を突き抜けるその眼差しの瞳は、恥じらいを漂わせながらも、奥底に真の強さを感じさせる、深い湖の青だった。

けれど彼女は、自分には他の花達の様に、陽の光を照り返して咲き輝く事の出来ないと言う雰囲気を、周りの静かな空気に白くにじませてもいた。

 

ある日の朝、紫陽花は空に頼んでみた。

自分にも、もっと強い光を照らして見てはくれないかと。

空は、紫陽花の願いを聞き入れ、太陽の光で、彼女を強く、強く照らし始めた。

光に照らされた彼女の頬は、濃い空の色と同じ様に輝き、高揚していた。

その様子を見詰めていたでんでん虫は、小さなため息をついた。

でんでん虫の目には、もう紫陽花が、他のダリアやグラジオラスと見分けがつかなくなってしまっていた。

 

幾日かが過ぎたある夕暮れ近い午後、紫陽花が、ふと足元に目を落とすと、一匹のでんでん虫が苦しそうにうずくまっていた。

紫陽花は、急に胸に苦しさを覚えた。

雨にぬれた地面の上で、ビー玉の様に光っていたでんでん虫が、今では干からびた他の石ころ達と見分けがつかなくなっていたからだ。

紫陽花は、もう照らす事を止める様に空に頼んだ。

空は、願いを聞き入れた。

しばらくしてにわか雨が、空から地面を濡らし、紫陽花もでんでん虫も、薄曇り色の宝石の様にキラキラと光り始めた。

紫陽花は、又パールの滴を身に散りばめていた。

その姿を見たでんでん虫は、嬉しくなった。

たとえずっと彼女と言葉を交わせない片想いだとしても、いつまでも幸せだと思った

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